シラノ・ド・ベルジュラック - エドモン・ロスタン(渡辺守章・訳)

最近はご無沙汰の読書感想文。


シラノ・ド・ベルジュラックは「英雄喜劇、韻文五幕」という表題を持つフランスの戯曲。青年隊のシラノは軍人としても詩人としても文句のつけ所が無い完璧な主人公だが、醜い鼻の持ち主である。そのシラノが恋するのは従妹のロクサーヌ。そのロクサーヌとシラノの同僚で美男のクリスチャンは両思いという三角関係を軸に、シラノという人間の生き様を描いている。

シラノ : シーッ!それで、いいんだ!……(ラグノーに)それで、受けたか?受けたろうな?
ラグノー : (泣きじゃくりながら)そりゃ、お客は、笑ったのなんのって!
シラノ : それでいい、俺の人生は台詞を付ける役だった───後は、忘れ去られる!

シラノがロクサーヌの腕の中で息絶えようとしている時に、彼は自分の死ぬ場所はロクサーヌの腕の中ではないことに気付き、「違う!この椅子じゃないぞ!」と言って不意に立ち上がる。墓場にまで「心意義」を持ち込もうとするシラノの信念の強さと格好良さに感動した。