イリヤの空 UFOの夏 その1〜その4 - 秋山瑞人
飛行機が空から浅羽をじっと見ている。浅羽の動きに合わせるようにして、どこか調子の外れたマヌーバを繰り返す。浅羽は声を上げて笑う。あれほど縦横に空を飛び回れるくせに、人と踊るときはこうも不器用なのだ。パイロットの面を見てみたい。どうせ顔を真っ赤にしているはずだ。UFOの夏の、夕暮れに焼けた空の下を見上げながら、浅羽は両腕を広げて大きく跳ねた。
伊里野を連れて逃げよう。逃げきれるはずもないのに。遠い南の島で伊里野と暮らす。それは幻想だ。
浅羽の中学生らしさが本当にうまく描かれている。そして浅羽の中学生らしい考えや心情を分かりすぎている榎本が素晴らしかった。
伊里野と浅羽を出会わせて、そして浅羽に辛い思いをさせ、最後には離れ離れになってしまった事の罪を感じて榎本が浅羽に殺されようとしている終盤のシーンが一番印象に残っている。表に出ていない過去の話等はたくさんありそうですが、榎本は最高にかっこいい。
伊里野を邪険にしてるところから、ファイヤーストームで浅羽を探すところ、最終的に伊里野と仲良くなる晶穂の心の動きが切なかった。
良い話にめぐり会えて良かった。